来日公演 先行インタビューレオ・ジアノラ  音楽を語る
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西垣林太郎(以下R)「3人のお子さんがいらっしゃると伺いました。」

 

レオ・ジアノラ(以下L)「はい。小・中・高に通う娘が3人います。」

 

「子育ては大変でしたか?フランスは日本よりも保育の仕組みなど充実していると聞きました。」

 

「クレッシュ(保育園)やマテルナル(幼稚園)などがあるのですが、地域にもよるようで、私の住んでいる辺りは施設も少ないです。しかもニースから近郊の小さな街のボーソレイユに引っ越したときも編入など大変でした。特に3歳以下の保育園は入れないケースもあるようです。」

 

「フランスでも大変なのですね。」

 

「ボーソレイユは小さな街なのです。娘たちは今は隣のモナコの学校に通っています。」

 

「国境をまたいで学校に通うことができるのですね。」

 

「本当にすぐ近くなのです。」

 

「レオさんも最近はモナコでの仕事も多いですよね。」

 

「はい。モナコ・フィルハーモニーのヴァイオリニストのザンザン(Zhang Zhang)や、モナコの王立音楽院で教えているギタリストのフィリップ・ロリ(Phillipe Loli)などと仕事をすることが多いです。イタリアやロシア、シンガポールなど海外の仕事もモナコ政府との関係で行くこともあります。もちろん、先日のスイスやドイツなどのようにそれとは別の企画で旅行することもあります。」

 

「そして、今回は日本ですね。」

 

「はい。日本は初めてで楽しみです。上の娘が日本が好きで、空手も習っています。今回の日本ツアーをとてもうらやましがっています。学校の都合で一緒には来れなかったのです。」

 

 

「来られる機会があると良いですね。」

(下に続く)

「フランスではイベント毎にアーティストが受け取る謝金以外に、政府から定額支給される仕組みがあると聞きました。何という名前か忘れてしまったのですが。」

 

「ああ、インターミトン・ドュ・スペクタクル(Intermittent du spectacle)ですね。私は今は使っていないのです。一定期間(304日間)に507時間または43件の正しく課税された仕事をフランス国内でしなければならないというハードルがあって、私の場合はモナコでの仕事は対象外なので難しいです。ただカリガガン(Caligagan)のバンドでフランスツアーにでているときは使えることもあります。あとはバーなどで定期的に演奏していればよいのですが。昔は、林太郎さんがニースにいたときは地元のバーでもよく演奏していましたが、深夜というか朝4時までの演奏の所も多くて、なかなか厳しいですね。特に子どもが生まれてからは時間的にも難しいです。体力的にももちろんですが。」

 

「はい。フランスに住んでいたときに、ライブ・バーによく朝の4時まで入り浸っていました。懐かしいです。もしインターミトン・ドュ・スペクタクル受け取れると謝金以外に一定額の配分が国から貰えるということなのですか。」

 

「そういうことではなく、働かない月にもそれ以前の謝金の実績に応じて一定額が支給される仕組みなのです。一種の失業手当のような感じでもあるのですが、例えば、一ヶ月間レコーディングをするとか、自分の練習に没頭したいとか、そういう状況では便利です。でも課された条件を絶えず満たしていないと更新されないので、ずっと休んでいる訳にもいかないのです。でも、そういった充電期間はアーティストにとってとても大切ですね。」

 

「有給休暇的な感じにも使えるのですか?」

 

「それはまた別にコンジェ・スペクタクル(Congés Spectacles)という別の仕組みがあって、普段の謝金から10%天引きされているのですが、それの払い戻しを仕事を休みたい期間に請求出来るのです。」

 

「日本にはない良い仕組みがさすがフランスにはありますね。」

 

「そうですね。コンセプトは良いのですが、運用上の問題点も多く感じていて、改善されていけばと思っています。」

 

「色々な国で演奏されていますが、日本での演奏はどのようなものになりそうですか。」

 

「それぞれの国・地域にお客さんの特徴があり、ジャズに限らないのでしょうけど、特にジャズはお客さんと演奏者と全体で作り上げていく部分が大きいです。自分でもどのようなものになるかが今から楽しみです。」

 

(完)


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